大判例

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横浜地方裁判所 昭和39年(ワ)919号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決要旨〕一、手形債務については、連帯債務者の一人のした相殺の絶対的効力にかんする民法第四三六条の適用はない。

二、手形債権を自働債権として相殺をするには、訴訟上防禦方法として相殺をなす場合とか相殺あるもなおその手形債権の一部が残存するような場合を除き、相殺の意思表示の外手形を相手方に交付することを必要とする。

〔判決理由〕手形法第四十七条第一項所定の手形義務者の合同責任とは手形法の根本原理たる手形行為独立の原則からして連帯債務と解すべきでなくその実質上各自債務とみるべきであつて、このことは同法条第四項において民法第四百三十四条所定の連帯債務者の一人に対する履行請求の絶体的効力を否定していることに徴しても明らかであるから、本件においてかりに被告主張のごとく原告に訴外株式会社富士屋石油に対する手形金支払債務がありかつ同訴外会社が原告に対して相殺の意思表示をしたとしても連帯債務に関する民法第四百三十六条所定の連帯債務者の一人のなしたる相殺の絶体的効力を生ずるに由なく(合同責任を不可分債務と解することは、右法理からして、より強く否定さるべきであるが、もしかりに不可分債務とみれば同債務に関する民法第四百三十条の定めるところにより右同法第四百三十六条の適用は排除されているから、結果的には同断である。)、したがつて被告の原告に対する本件手形債務にはなんらの消長を来すものではないから、被告の抗弁はすでにこの点において失当たるを免れない。しかのみならず被告の抗弁は原告引用の最高裁判所判例の趣旨からしても亦理由なく、更に手形は本来呈示証券なのであるから、時効中断の場合は別として(最高裁昭和三八年一月三〇日大法廷判決、集第十七巻第一号九九頁以下)、裁判外で請求し附遅滞の効果を生ぜしめるには必ずこれを手形債務者に呈示するを要すると共に、手形債権を自働債権として相殺をなすには、手形の受戻証券たる性質上、訴訟上防禦方法として相殺をなす場合とか相殺あるもなおその手形債権の一部が残存するような場合を除き、相殺の意思表示の外手形を相手方に交付することを必要とすると解する(東京高裁昭二九、六、一四判決、下民集第五巻第六号八七二頁以下)を正当とするから、かかる手形交付の事実の主張ならびに立証のない本件においては、この点からしても被告の抗弁は失当である。すなわち、その余の点について判断するまでもなく、被告の抗弁は排斥を免れないことに帰する。(若尾元)

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